はろはろNIIHAMA ARTプロジェクトのひとつとして「フリーペーパーHoo-JA!」に掲載されるコラムをご紹介します。
劇団ドクトペッパズ 古賀彰吾さん
「ガムちゃん」
私はとにかく、記憶力がない。昔、吉祥寺の占い師に占ってもらった時、引っ越した日にちなど転機はいつ起こったかと聞かれ、よく覚えてないと答えると、「魂が腐っているわね」と言われたことがある。これは相当に腹が立ったので、覚えている。
ただ、子どものころに覚えていることがある。幼稚園の友達に、やっちゃん、という子がいた。やっちゃんは他の子が外で遊ぶ中、ほとんど外に出ず一人で絵を描いていた。私も基本は外で遊んでいたが、気が向くとやっちゃんのところへ行った。やっちゃんはお絵かき帳を広げて、私を迎えてくれる。やっちゃんの描くものはいつも同じモチーフだった。ガムちゃんだ。
ガムちゃんというのは任天堂のカービィに似ているが、胴体がオレンジ色で足が緑色。全身がガムの生き物だ。お絵かき帳の左下にガムちゃんが描かれる。そして、ガムちゃんを取り囲むように、スーパーマリオのステージのようなものが描かれる。上から落ちてくる敵、落とし穴、針地獄。やっちゃんは、所々にガムちゃんを書き足しながら、ガムちゃんがこの難関を越えていく様子を私に説明していく。ページを捲るとさらなる難関が用意されていた。そうして、私はガムちゃんの冒険を興奮をもって見守っていた。それがなぜか、たまらなく面白かった。
幼稚園の記憶となると、他にはまるで覚えてないのに、覚えているのが友達の作り出したフィクションの世界であるというのも、妙な話だ。私は今、子どもたちが観る演劇の仕事をしているけれど、やっちゃんのように上手くやれているかと、ふと立ち止まりたくなる。
劇団ドクトペッパズ 古賀彰吾さん
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劇団ドクトペッパズ 古賀彰吾さん と あかがねミュージアムのご縁
2019年あかがねミュージアムにて『うしのし』が上演されました。人形劇なのですが、舞台美術が驚くほど変化するとても素晴らしい作品でした。子どもだけでなく大人の方からも非常に好評を博しました。
今回の企画にあたり、また映像ではありますが、古賀さんの劇団ドクトペッパズの『うしのし』を上映できることをうれしく思います。
(山本清文)